損サで働いていると、「なんで運転すると人はキレやすくなるんだろう」、「なんで危険だとわかっていながら危ない運転をするんだろう」って思うことありますよね。
この記事では、交通心理学の基礎のうち損サ業務で使えそうなものを集めました。
ぜひお楽しみください!
交通心理学とは?
交通心理学は、
交通社会に参加する歩行者・自転車・車(交通参加者)の行動と、その行動を起こしている心理的メカニズム・環境面での背景要因を解明し、交通事故減少を目的とした心理学の一つの分野です。
損サの仕事は事故が起きたあとの対応なので、交通事故防止の話は意味がないと思われるかもしれませんが、意外と約に立つことがあるので、ぜひ最後までお読みください。
こちらの記事では、損サで使えそうな心理学の基礎を紹介しています。
併せて参考にしてみてください。
交通事故の原因とは?
交通事故は、環境要因(道路の凍結など)と人的要因(ヒューマンエラー)が主な原因です。
ここでは、人的要因(ヒューマンエラー)について深掘りしていきます。
運転におけるヒューマンエラーとは
運転においてヒューマンエラーは下記のようなことが考えられます。
- わき見
- 不注意
- 別のことを考えていた
ヒューマンエラーが起きる原因
運転におけるヒューマンエラーは下記のような理由で起こります。
- 時間の制約
- 焦りなどの感情的なプレッシャー
- 思い込み
- 運転技術の欠如
意識的にこれらのヒューマンエラーを認識し、自分自身を客観的に見るのが大切かもしれませんね。
これらを原因としてリスク(交通事故)が起きるのですが、それを防ぐためにはどうしたらいいのでしょうか。
リスクを避けるために必要なこと
リスクを避けるために必要なのは、①発見すること、②どのくらい危ないのか判断することです。
順番に見ていきます。
1.リスクを発見する
リスクを発見することを”ハザード知覚”といいます。
たとえば
- 前方の車両が停車しているので自分も減速する
- 駐車場から出てくる車両が飛び出してきそうだったので停車した
- 路肩に駐車中の影から歩行者や自転車が来るかもしれないと思い徐行した
2.どのくらい危ないかを判断する
発見したリスクがどのくらい危ないかを判断することを”リスク知覚”といいます。
たとえば
- 前の車両が蛇行運転をしていたので、急ブレーキされて追突する危険性を感じた
- 駐車場から出てくる車の運転手がこちらを見ていなかったので、衝突の危険性を感じた
- 見通しの悪い交差点では、確認したつもりでも車両が来るかもしれないと危険を認知した
では、事故を起こしやすい(ヒューマンエラーを起こしやすい)人はいるのでしょうか。
事故を起こしやすい人はいるのか
損サで働いていると「え、またこの契約者事故したの?」と何度も事故受付が来る人っていますよね。
そのような人は、心身の状態によって事故を起こしやすい条件下にある可能性が考えられます。
生まれながら持っている知能は事故の起こしやすさには関係ない
これまでの研究において、その人が元々もっている知能や素質よりも、心の状態(不安・焦り・怒り等)、体調、運転スキルなどの方が事故の起こしやすさに関わっています。
交通心理学では、事故の起こしやすさを示す下記2つの用語があります。
個人差は事故を招く要因になり得る
交通心理学では、個人差は2パターンあるといいます。
①個人差(個々の性格や特性)と、②個人内差(同一人物内でのそのときの心の状態・疲労)の2つです。
①の個人差でいうと、性別や年齢、性格などが関係しています。
リスクを冒す傾向が強いのは
- 男性>女性
- 年齢が低い人>年齢が高い人
②の個人内差でいうと、
リスクを冒す傾向が強いのは
- 疲れているとき
- 焦っているとき
なぜ危険だとわかっていても危ない行動をしてしまうのか
日常生活においても、危ないとわかっていても下記のような行動をしていませんか。
- 信号のない道路を横断する
- 電車で駆け込み乗車をする
- 大雨で増水した河川の様子を見に行く
- 電車のホームでの歩きスマホ
このような行動は車の運転においても同様です。
なぜ人は、危険を認識しているにもかかわらず、危ない行動をしてしまうのでしょうか。
自らリスクを取る行動をする人の心理
自ら危険な行動をとってしまうことを「リスクテイキング」といい、蓮花一己・向井希宏著「交通心理学」では、具体例は下記の8点と説明されています。
引用:蓮花一己・向井希宏著「交通心理学」
- 無理な追い越し
- 信号無視
- 短い車間距離
- カッティング
- カーブ・交差点での速度の出し過ぎ
- 側方間隔を取らないポジショニング
- ヘッドライトの未点灯
- シートベルトの未着用
人はなぜ危険な行動をとるのか
人がなぜ危険な行動をとるのかには、下記のような理由があります。
- 「このくらい平気だろう」と、リスクを低く見積もる
- 仲間からの褒められる、焦り、ストレス解消など別の欲求を満たしたい
- スピードを上げることで移動効率が良くなる
- 疲労や緊張で正常な判断ができない
色々な場面でリスクをとってしまう人を「リスクテイキング症候群」と呼ぶことがあります。
【初動時に使える?】黄色信号で渡ってしまう理由
蓮花一己・向井希宏著の「交通心理学」の中では、黄色信号を横断してしまう理由として、下記をあげています。
引用:蓮花一己・向井希宏著の「交通心理学」
- 信号を見落とした(わき見など)
- 前の車についていって、信号が見えなかった
- 交差点が大きくて黄色で進入しても途中で赤になった
- 速度を出しすぎていて、黄色になっても止まり切れずに赤になった
- 交差する道路の信号が赤になったので発進した(フライング)
- 赤信号で止まっていたが長い信号で辛抱できずに発進した
- 車が来ていなかったので赤信号だったが進行した
①~④はリスクを発見できずに注意や速度コントロールを誤ったケース、⑤~⑦は意図的な信号無視とわけることができます。
信号のある交差点での事故の初動時に、①~⑧のどれに当てはまるか聞いてみるのも良いかもしれませんね。
人はなぜ運転中キレやすくなるのか
運転するとキレやすくなる原因として下記の理由が考えられます。
- 他のドライバーとコミュニケーションが取りづらく、誤認が生まれやすいから
- 車内はプライベート空間であるため、自分の意図に反する行動をされると怒りに繋がりやすいから
- 相手の顔や言葉が見えないため、攻撃性を抑えることができなくなるから
- 運転時の焦りやストレスが攻撃的な言動に変わるから
他のドライバーとコミュニケーションが取りづらく、誤認が生まれやすいから
普段、相手の言葉・表情・声のトーンなど様々な情報を読み取りながらやり取りしています。
人の印象を決めるものは視覚から入る情報が一番大きいと言われています。(メラビアンの法則)
車の運転は、相手からの情報が少ない中でのコミュニケーション(カーコミュニケーションといいます)なので、誤認が生まれやすい状態です。
自分は親切のつもりでやっても、相手からすると”怒り”につながってしまう行動になる可能性もあります。
車内はプライベート空間であるため、自分の意図に反する行動をされると怒りにつながりやすいから
道路は公共空間である一方で、車内では自分の部屋にいるような感覚に。
そのような状況で自分の意図に反することをされると、怒りにつながる原因となります。
たとえば、相手は車線変更しただけなのに「割り込みされた!」と感じてしまうことも。
自分のプライベートな空間を見ず知らずの人に邪魔されたと感じて”怒り”を感じてしまうのかもしれません。
相手の顔や言葉が見えないため、攻撃性を抑えられなくなるから
相手の顔が見えないと、心の距離も大きくなります。
顔が見えないインターネット上で、誹謗中傷などのコメントが多いですよね。
もし、前方車両のドライバーの顔が見えるようになったら、あおり運転は減るのでしょうか。
運転時の焦りやストレスが攻撃的な言動に変わるから
渋滞にハマったり、急いでいたりすると心の余裕がなくなります。
そのような状況で、クラクションなど相手から攻撃的だと感じる行為をされると、すぐに腹を立ててしまったりするのです。
また、前の車両がノロノロと走っていたり、急に路肩へ停車したりと、自分の意に反する行動をされることで怒りを感じるのかもしれません。
- わき見などで信号を見落とした
- 車内はプライベート空間であるため、自分の意図に反する行動をされると怒りに繋がりやすいから
- 相手の顔や言葉が見えないため、攻撃性を抑えられなくなるから
- 運転時の焦りやストレスが攻撃的な言動に変わるから
まとめ
今回は交通心理学について、損サ業務で使えそうな知識を紹介しました。
損サ業務は複雑かつイレギュラーなことばかりが起きると思います。
こちらの記事では、損サ業務で使えそうな心理学を紹介していますので、併せて参考にしてみてください!
この記事が少しでも損サの方々のお役に立てたらうれしいです。
参考文献・サイト
- 蓮花一己・向井希宏著「交通心理学〔改訂版〕 (放送大学教材)
」 - NHK生活情報ブログ「運転中になぜキレやすい?」